聖書のペテロってどんな人?失敗から学べる3つの生き方のヒント

皆さんは聖書に出てくる「ペテロ」という人物を知っていますか?
ペテロは世界中でその名前が知られている、聖書に登場する重要な人物のひとりです。
ローマにあるサン・ピエトロ大聖堂は世界最大級の大きさですが、ペテロの墓の上に建てられたといわれています。また、世界中で名付けられている「ピーター」「ピエール」という名前もペテロが語源になっていて、多くの人や歴史に影響を与えています。
この記事では、ペテロの人生をわかりやすく紹介しながら、私たちが学べる教訓についてお伝えします。「自分に自信がない」「失敗が怖い」などの悩みを抱えている人には、きっと力になるはずです。
聖書のペテロの人生
今でこそ世界中で有名になったペテロですが、最初はただの漁師でした。しかし漁師としては致命的な欠点がありました。それは、「魚が獲れない」ということです。
イエス・キリストと出会った日も、夜通し漁をしていましたが、一匹も取れませんでした。
しかし、イエス・キリストに出会ったことでその人生は180度変わっていきます。ここではペテロの人生について、段階ごとに紹介します。
1.「ペテロ」という名前の意味
「ペテロ」と言う名前は、「岩」と言う意味です。ギリシア語では「ペトロス」、ヘブル語では「ケファ」と言います。名前からしても、キリスト教の礎となる存在であると言えるでしょう。
聖書では、以下のように書かれています。
マタイによる福音書 16章15〜18節そこでイエスは彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。シモン・ペテロが答えて言った、「あなたこそ、生ける神の子キリストです」。 すると、イエスは彼にむかって言われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの事をあらわしたのは、血肉ではなく、天にいますわたしの父である。 そこで、わたしもあなたに言う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てよう。黄泉の力もそれに打ち勝つことはない。 |
ヨハネの福音書 1章40〜42節ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。彼はまず自分の兄弟シモンに出会って言った、「わたしたちはメシヤ(訳せば、キリスト)にいま出会った」。そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは彼に目をとめて言われた、「あなたはヨハネの子シモンである。あなたをケパ(訳やくせば、ペテロ)と呼ぶことにする。 |
2.ペテロとイエスの出会い
ペテロとイエスの出会いは、聖句では以下のように書かれています。
ルカによる福音書 5章1〜11節さて、群衆が神の言を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、舟からおりて網を洗っていた。 その一そうはシモンの舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸きしから少しこぎ出させ、そしてすわって、舟の中から群衆にお教えになった。話がすむと、シモンに「沖へこぎ出だし、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。 シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群がはいって、網が破れそうになった。そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。 |
ペテロはもともと「シモン」という名前で、漁師をしながら質素に暮らしていました。
ある日、イエスの話を聞こうと湖のほとりに人が集まっていましたが、人数が多かったためイエスは沖に出て風を利用して御言葉を伝えようと考えました。そこでイエスはシモンの船を借りて、そこから話をしたあと、「沖に出て網を下ろしなさい」と言います。
ペテロは「一晩中働いたけれど魚はとれなかった」と言いながらも、イエスの言葉に従いました。すると大量の魚がとれたのです。これが、ペテロとイエスの出会いでした。
3.ペテロの人生最大の失敗:「知らない」と否認した夜
ペテロは情熱的で真っ直ぐな性格で、イエスへの愛情と信頼を惜しみなく示す一方、誤解や失敗も多い人物でした。
先に述べたようにイエスに対する信仰告白を成功させ「教会の礎」とされましたが、その直後にはイエスの運命を理解できず、いさめたことで「サタンよ下がれ」と厳しく叱責されます。
ペテロは自分の理解を超えることに戸惑いながらも、イエスへの忠誠心は失いませんでした。しかし、実際にイエスが捕えられると、恐れと混乱にとらわれ、3度も「知らない」と否認してしまいます。そして、鶏の鳴き声とともにイエスのまなざしを受け、自らの裏切りを悟った彼は、激しく泣きました。
該当の箇所は以下の通りです。
ルカによる福音書 22章54〜62節それから人々はイエスを捕らえ、ひっぱって大祭司の邸宅へつれて行った。ペテロは遠くからついて行った。人々は中庭のまん中に火をたいて、一緒にすわっていたので、ペテロもその中にすわった。 すると、ある女中が、彼が火のそばにすわっているのを見、彼を見つめて、「この人もイエスと一緒にいました」と言った。ペテロはそれを打ち消して、「わたしはその人ひとを知らない」と言った。 しばらくして、ほかの人がペテロを見て言った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。 約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人ひともガリラヤ人びとなのだから」。ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終わらぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。 主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。そして外へ出て、激しく泣いた。 |
ペテロが「主よ。あなたとご一緒なら、牢であろうと、死であろうと、覚悟はできております。」と言ったほど本気でイエスを愛していたのは確かですが、恐れに屈してしまったことで、激しく後悔することになります。
しかし、その後悔が後に世界に名を残す人物にならせました。
4.晩年のペテロ:リーダーとしての使命と殉教
ペテロはイエスを否定し、イエスは結局そのまま十字架に付けられて亡くなってしまいました。しかし、後悔しつつも何をすれば良いかわからず、元の仕事である漁を行っていました。
しかし、魚が獲れないという致命的な欠点は直っておらず、その日も夜通し網を下ろしても何も釣れませんでした。
夜明けにイエスが湖畔に現れ、船上のペテロたちに声をかけますが、彼らにはそれがイエスだとはわかりませんでした。しかしイエスが、「船の右側に網を下ろしなさい」といい、その通りにするとたくさんの魚が獲れ、イエスであることを悟りました。
イエスは岸辺で食事をさせ、それが済むとペテロに向かって「あなたは、この人たちが愛する以上に、わたしを愛していますか」と尋ね、ペテロが「はい、主よ。私があなたを愛していることは、あなたがご存じです」と答えると、イエスは「わたしの子羊を飼いなさい(信徒たちを導きなさい)」と命じました。
イエスは自分を3度否定した弟子に対して同じ質問を3回繰り返し、ペテロは心を痛めながらも3回同じ答えを返しました。そしてイエスの昇天後に、迫害を受けながらも力強く福音を述べ伝えました。1日に3000人を伝道した日もあるくらい、ものすごい勢いでした。
ペテロはリーダーとしての役割を果たし、イエスが「しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう。」と言った通り、最後は捕えられて逆さ十字架につけられ殉教しました。
少し長いですが、聖書には以下の箇所に記載があります。
ヨハネによる福音書21章3〜17節シモン・ペテロは彼らに「わたしは漁に行くのだ」と言うと、彼らは「わたしたちも一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って舟に乗った。しかし、その夜はなんの獲物もなかった。 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。 すると、イエスは彼らに言われた、「舟の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。イエスの愛しておられた弟子が、ペテロに「あれは主だ」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸になっていたため、上着をまとって海にとびこんだ。 しかし、ほかの弟子たちは舟に乗ったまま、魚のはいっている網を引きながら帰って行った。陸からはあまり遠くない五十間ほどの所にいたからである。 彼らが陸に上って見ると、炭火がおこしてあって、その上に魚がのせてあり、またそこにパンがあった。イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」。 シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子たちは、主であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。 イエスはそこにきて、パンをとり彼らに与え、また魚も同じようにされた。イエスが死人の中からよみがえったのち、弟子たちにあらわれたのは、これで既に三度目である。 彼らが食事をすませると、イエスはシモン・ペテロに言われた、「ヨハネの子シモンよ、あなたはこの人たちが愛する以上に、わたしを愛するか」。ペテロは言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に「わたしの小羊を養いなさい」と言われた。 またもう一度彼に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。彼はイエスに言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を飼いなさい」。 イエスは三度目に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。ペテロは「わたしを愛するか」とイエスが三度も言われたので、心をいためてイエスに言った、「主よ、あなたはすべてをご存じです。わたしがあなたを愛していることは、おわかりになっています」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を養いなさい。よくよくあなたに言っておく。あなたが若かった時には、自分で帯をしめて、思いのままに歩きまわっていた。しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう。 |
聖書のペテロの人生から学べる3つの教訓
ペテロの時代と、今私たちが生きる時代は大きく異なりますが、成功した人物から学ぶことは自分自身の成長に繋がります。
これまでペテロの人生について段階ごとに振り返ってきましたが、ここからは、その人生から学べる3つの教訓を考えてみたいと思います。
1. 人は誰でも変われる
ペテロの人生の転機は2回ありました。
1回目は漁師からイエスの弟子になる場面です。一晩中漁をしても獲れなかったのに、イエスから船を出せと言われ、素直に従ったことでペテロの人生は変わりました。
2回目の転機はイエスが十字架にかかった後です。ペテロはイエスが十字架にかかる時は臆病でしたが、その後は聖霊を受けて死も迫害も恐れずに福音を述べ伝えました。ペテロはイエスの一番弟子だったので3回も否定したことを激しく後悔しましたが、イエスに対する初めの心を取り戻し、歴史に名を残す人物となりました。
ペテロの様々な経緯を通して言えることは、ペテロには常に素直さと熱心さがあったということです。
私たちも失敗をすることはあっても、素直に熱心に努力を続ければ、別人の人生を歩むことができると言えるでしょう。
2. 失敗は取り返せる
先にも述べた通り、ペテロはイエスの一番弟子として生きましたが、それだけ失敗も多い人生でした。
ここで、失敗という繋がりで紹介しておきたい人がいます。それはペテロと同じ12弟子として活動していた「イスカリオテのユダ」です。ユダはイエスを銀貨30枚で裏切った人ですが、その後自らの罪の重さに耐えかねて自殺してしまいました。
ペテロもユダも「失敗をした」という点では同じです。しかし、ユダは失敗して後悔はしたけれども、改めなかったので自殺してしまいました。一方でペテロは失敗して後悔して、改めたので人生が変わりました。
間違ったことは改めさえすれば、神様も許してくださるし、学校や会社でも頑張りを認めてもらえるでしょう。もし今、何か大きな失敗をして後悔しているなら、もう2度と繰り返すまいと努力してみてください。きっと周りからの目も変わるはずです。
3. 良心的で純朴な性格は得する
ペテロは純粋で良心的だったので、平素の行いがイエスと出会った時にも出て、そのまま世界的な人物にまでなりました。
これを読んでいる人の中には、良心的で純朴な性格のまま学校や会社で過ごして、損した気分になったことがある人も多いかと思います。頼まれごとを断れなかったり、気を使いすぎて疲れたりすることもあるでしょう。
しかし、ペテロの人生を見ていると、自分の人生を変える決定的な出来事の前では、この性格を持っていた方がより良く多くのものを得られると言えます。自分の性格を大切に思って、臆することなく人生を歩んでいきましょう!
まとめ
ペテロの人生は、たくさんの失敗とやり直しのくり返しでした。しかし、それがすべてではなく、何度もやり直すチャンスを与えられました。はじめは普通の漁師だったペテロが、イエスに出会って弟子になり、色々なことを経験する中で、だんだん強くて優しいリーダーへと変わっていったのです。
私たちも、学校や職場でうまくいかないことや、後悔することがあるかもしれません。しかし、そこで諦めずに正直に反省して、もう一度やり直せば、少しずつ前に進むことができます。
大切なのは失敗しないことではなく、失敗した時にどう向き合うかです。ペテロのように、間違えても立ち上がることをくり返すことで、成長につながると言えます。